遺品整理士がテーマの韓国ドラマ『ムーブ・トゥ・ヘブン』徹底解説

本記事では、Netflixオリジナル韓国ドラマ『ムーブ・トゥ・ヘブン:私は遺品整理士です』を中心に、遺品整理士という職業の社会的意義やドラマでの描写、感動的なストーリーと視聴者への影響、視聴方法や関連作品について詳しく解説します。

遺品整理士とは?現代社会で求められる専門職

まず「遺品整理士」とはどんな仕事なのか簡単に説明します。遺品整理士とは故人の遺品(所持品や生活用品)を整理・処分する専門家のことです。かつては家族が行っていた遺品の整理ですが、核家族化や高齢化が進む現代では専門の業者に依頼するケースが増えています。

特に一人暮らしの高齢者が増え、「孤独死」と呼ばれる誰にも看取られずに亡くなるケースも社会問題となる中、遺品整理士は故人の遺品を適切に扱い、遺族の心の整理を支える存在として必要不可欠な職業になってきています。

遺品整理士は単なる清掃業者とは異なり、法律に則った遺品の仕分け・処分の知識を備え、故人の想いがこもった品々を丁寧に取り扱います。

不要品の廃棄やリサイクル手続きだけでなく、形見の品の供養(お焚き上げなど)や遺族への形見分けのサポートも行い、遺族に寄り添った心のケア を提供するのも大切な役割です。現代日本では一般財団法人遺品整理士認定協会の認定資格も存在し、専門知識とマナーを学んだプロとして活躍する人が増えています。

こうした背景から近年、遺品整理を題材としたドラマも増えてきています。少子高齢化や核家族化による遺品整理ニーズの高まりを受けて、フィクションの世界でも遺品整理士にスポットを当てた作品が制作されるようになりました。その代表的存在が、今回紹介する韓国ドラマ『ムーブ・トゥ・ヘブン:私は遺品整理士です』なのです。

韓国ドラマ『ムーブ・トゥ・ヘブン:私は遺品整理士です』とは

『ムーブ・トゥ・ヘブン:私は遺品整理士です』は、2021年にNetflixで配信された韓国ドラマです。全10話からなるNetflixオリジナルシリーズで、イ・ジェフン(チョ・サング役)とタン・ジュンサン(ハン・グル役)という実力派俳優が主演を務めています。ジャンルはヒューマンドラマで、遺品整理士という異色の職業をテーマに据えた社会派の内容が大きな注目を集めました。

本作は遺品整理士として実際に活動するキム・セビョル氏のノンフィクション随筆『去ったあとに残された物たち』を着想源としています。実在の遺品整理士による体験記を元にしているだけあって、ドラマには現実のエピソードが色濃く反映されており、フィクションでありながらリアリティと説得力を持った物語となっています。

あらすじと設定

主人公はアスペルガー症候群を持つ20歳の青年ハン・グルです。几帳面で記憶力が非常に高いグルは、父親ハン・ジョンウと共に遺品整理業者「ムーブ・トゥ・ヘブン」を営み、亡くなった方の部屋を清掃し遺品を整理して、その中に込められた故人の想いを遺族に届ける仕事を手伝っていました。

物語冒頭で最愛の父ジョンウが突然亡くなり、グルは天涯孤独の身に。そこでジョンウの遺言により後見人として指名された叔父のチョ・サングがグルの前に現れます。サングはジョンウの異母弟ですが、前科がありグルともそれまで面識がなかった人物です。

最初は渋々ながらグルの保護者となったサングでしたが、父の遺した遺品整理会社を存続させるため、そして相続財産の管理者になる条件を満たすために、グルと一緒に「ムーブ・トゥ・ヘブン」で働き始めます。

共同生活と仕事を通じて、性格も境遇も正反対の叔父と甥が次第に心を通わせていく過程が大きな軸となります。各話では彼らが請け負う様々な遺品整理の依頼が描かれ、遺品を通じて浮かび上がる故人と遺族の物語に2人が向き合っていきます。グルとサングは遺品整理士として遺族へ故人の遺した想いを届ける中で、人生や死、家族について深く考え、互いに成長していくのですj

ドラマのタイトル「ムーブ・トゥ・ヘブン(Move to Heaven)」やサブタイトル「私は遺品整理士です」が示す通り、本作では遺品整理士の仕事そのものが物語の核になっています。劇中で「私たちが最後のお引越しをお手伝いします」という印象的なモットーが掲げられており、遺品整理を亡くなった方の“天国への最期の引っ越し”になぞらえているのが特徴的です。

このように前向きで温かみのあるコンセプトが全編を貫いており、死を扱うテーマでありながら重苦しさよりも希望や癒やしを感じさせる作品に仕上がっています。

ドラマで描かれる遺品整理士の仕事と社会的意義

劇中でグルとサングが携わる「遺品整理士」の仕事ぶりは、現実のそれと大きくかけ離れないよう丁寧に描かれています。

遺品整理の依頼が入ると、2人はワゴン車で現場となる故人の家に赴きます。家財道具や所持品を一つ一つ丁寧に仕分けし、写真や手紙など思い出の品は専用の黄色い箱に大切に収めていきます。

貴重品や重要書類を探し出して遺族に渡すことはもちろん、部屋の清掃や大型家具の運び出し、不要品の処分まで包括的に行う様子が具体的に描かれます。

中には事故や事件現場の悲惨な現状を片付ける回もあり、遺品整理士の過酷さや社会的役割がリアルに伝わってきます(第3話では血痕の残る犯罪現場の清掃に直面するエピソードも描かれます)。

遺品整理士としての彼らの最大の使命は、故人の「伝え切れなかった想い」を遺品から汲み取り、それを遺族へ届けることです。

グルは写真の配置や部屋に残された品々から故人の人生や気持ちを読み解く特殊な才能を持っており、サングと共に遺族へ故人からのメッセージを手渡していきます。

「遺品は故人からの手紙」という考え方で、例えば現金の束と入出金明細から長年伝えられなかった親心を読み取ったり、残された日記や愛用品から故人の真意を探り当てたりと、ただ物を処分するだけではない、心の橋渡しともいえる物語が展開します。

こうしたドラマの描写から、遺品整理士という職業の社会的意義がひしひしと伝わってきます。遺族に代わって遺品を整理することで肉体的・精神的負担を軽減し、さらに故人の想いを届けることで遺族が心残りなく故人を見送れるよう支援する――まさに縁の下の力持ち的な存在です。

劇中では、「遺品整理士は遺族に『ありがとう』と言われる仕事」というナレーションもあり、単なるビジネスではなく人と人との絆をつなぐ尊い仕事であることが強調されています。

一方で、ドラマはフィクションらしい演出も交えています。実際の遺品整理では必ずしも毎回ドラマチックなエピソードがあるわけではありませんが、本作では各回に故人と遺族の感動的なストーリーが巧みに織り込まれています。

遺品整理士の仕事のリアルさと、人間ドラマとしての起伏を両立させることで、専門知識のない視聴者にもその社会的価値が伝わりやすくなっていると言えるでしょう。

感動的なストーリーと心揺さぶるエピソード

『ムーブ・トゥ・ヘブン』最大の魅力は、遺品整理を通じて描かれる一話一話の感動的なストーリーです。死という重いテーマを扱いながらも、決して暗いだけでなく毎回涙と温かさに包まれるようなエピソードが展開され、多くの視聴者の心を揺さぶりました。ここでは特に印象的なエピソードの一部を紹介します。

孤独死した青年と両親の絆(第1話): ある若い工場作業員が事故で急逝し、グルとサングがその遺品整理を担当します。部屋には彼が将来の夢を書き留めたメモや、離れて暮らす老いた両親を思う痕跡が残されていました。遺品を通じて浮かび上がったのは、亡くなった青年の両親への深い感謝と愛情です。耳の不自由な両親に代わり、グルたちがその想いを代弁して届けるクライマックスでは、親子の絆に触れ、心が揺さぶられるシーンとなりました。

老夫婦が選んだ最期の旅(第6話): 長年連れ添った高齢の夫婦から「2人で部屋を片付けてほしい」という依頼が入ります。実はその老夫婦は、お互いを想い合った末に二人一緒に人生の幕を下ろす決意をしていました。事前に「ムーブ・トゥ・ヘブン」に連絡を入れ、自分たちの遺品整理を予約してから静かに手を取り合って旅立ったのです。現場に駆けつけたグルとサングは、残されたアルバムや手紙から夫婦の固い愛情と覚悟を知り、胸が締め付けられます。夫婦が遺したメッセージボックスを届けられた娘は、初めて両親の本心を理解し、涙ながらにその思いを受け止めるのでした。

海外養子が探した母の愛(第9話): 韓国から幼い頃に海外養子に出された青年マシューが実の母親を探していましたが、皮肉にも彼が見つけたのは母の訃報でした。グルたちはマシューの依頼で母の遺品整理を行うことに。母の日記や写真から明らかになったのは、やむなく子供を手放した母の長年の後悔と愛情でした。しかし直接伝える術のないまま2人は生前に再会できず、マシューは誤解から母を憎んでいたのです。遺品として残されていた手紙とプレゼントを介し、母の真実の想いがマシューに届くシーンは本作屈指の涙腺崩壊ポイントとなりました。血のつながりや国境を越えた親子愛をテーマに、多くの視聴者の関心を集めました。

これら以外にも、遺品整理を依頼した遺族側に秘密やドラマがあるパターン(第5話では殺人事件の被害者となった医師の遺品から意外な事実が判明)、遺品整理士であるサング自身の過去に関わる物語(第7~8話ではサングのかつての友人との確執が明らかになる)など、各エピソードが多彩な人間模様と社会問題を映し出しています。遺品整理という題材を通じて、家族愛、社会の孤独、命の大切さ、赦しといったテーマが丁寧に紡がれており、視聴後には毎回考えさせられるものがあります。

特に最終回にかけては、グルとサング自身の物語も大きな感動を呼びます。最初は利益目当てで後見人になったサングが、グルと過ごすうちに叔父としての情愛に目覚め、不器用ながらも彼を守ろうと奮闘する姿は多くの視聴者の涙を誘いました。

グルもまた父の死という悲しみに真正面から向き合い、叔父や友人に支えられながら一歩ずつ成長していきます。ラストでは互いに本当の家族のような絆で結ばれた二人の姿が描かれ、静かな感動に包まれて物語は幕を閉じます。

視聴者の反応とドラマが与えた影響

批評面でも本作は高い評価を獲得しています。2021年の第3回アジアコンテンツアワード(釜山国際映画祭主催)では、最優秀作品賞(ベストクリエイティブ)最優秀脚本賞最優秀俳優賞(主演のイ・ジェフン)という三冠に輝き、国際的にも質の高いドラマとして認められました。

Netflix配信作品ということもあり世界各国で視聴され、韓国のみならず日本でもNetflixのトップ10にランクインするなど話題をさらいました。Rotten Tomatoesといった海外レビューサイトでも軒並み高評価を記録し、97%の高い満足度(Rotten Tomatoes、シーズン1)を獲得するなど、グローバルな視点で見ても成功を収めた作品と言えるでしょう。

本作が与えた社会的影響としては、遺品整理士という仕事への注目度が高まったことが挙げられます。視聴者からは「遺品整理の現場を初めて知った」「こんな大事な役割を担う職業があるとは思わなかった」など、縁の下で活躍する遺品整理士への敬意や感謝の気持ちを新たにした人も多かったようです。

また、劇中で扱われた孤独死や老人介護、海外養子縁組といった社会問題について考えるきっかけになった、一人で亡くなる人を減らしたい、生きているうちに大切な人に想いを伝えようと思った、ドラマをきっかけに自分の生き方や家族との向き合い方を見直すなど、エンターテインメントを超えて人生観に影響を与える作品だったと言えるでしょう。

視聴方法は?どこで見られますか?

『ムーブ・トゥ・ヘブン:私は遺品整理士です』はNetflixで独占配信されている作品です。したがって、視聴するにはNetflixのアカウントが必要になります。2021年5月の配信開始以降、Netflixで全10話をいつでも見ることができます。

Netflixでは日本語字幕はもちろん、日本語吹き替え音声も用意されているため、韓国語がわからない方でも安心して楽しめます。各話約50分程度と比較的短く、エピソード数も10話完結と韓国ドラマにしてはコンパクトなので、週末などに一気見するのもおすすめです。

関連作品:遺品整理士や死をテーマにしたドラマ

遺品整理や死者の想いをテーマにしたドラマは、他にもいくつか存在します。本作『ムーブ・トゥ・ヘブン』が気に入った方や、遺品整理士というテーマに興味を持った方にぜひおすすめしたい関連作品をいくつか紹介します。

星降る夜に(日本ドラマ、2023年)

テレビ朝日系列で放送されたラブストーリー。産婦人科医の女性(吉高由里子)と遺品整理士の男性(北村匠海)が出会い、命の始まりと終わりに向き合う者同士の恋愛を描きます。遺品整理士の仕事描写も交えつつ、生と死の対照的な世界観が見どころです。

②dele(ディーリー)(日本ドラマ、2018年)

山田孝之&菅田将暉のダブル主演による一話完結型ドラマi。こちらはデジタル遺品、つまり故人のパソコンやスマホに残るデータの整理・削除を請け負う特殊な仕事を題材にしています。依頼人の死後、不都合なデータを消去するという設定で、現代ならではの「デジタル遺品」の問題を扱った異色作です。毎回豪華ゲストと練り込まれたストーリーで高評価を得ました。

③遠足に行く日(소풍 가는 날)(韓国ドラマ、2017年)

tvNのドラマステージ(単発ドラマ企画)で放送された作品で、遺品整理士を主人公に据えた物語です。俳優キム・ドンワンが、自殺未遂から立ち直り遺品整理士として働く青年を演じています。作中の遺品整理会社名「遠足に行く日」には「亡くなった人があの世へ遠足に行くように旅立てますように」という願いが込められており、死をポジティブに捉える姿勢が『ムーブ・トゥ・ヘブン』とも通じる作品です。

これらの作品はそれぞれ切り口やジャンルは異なりますが、「人生の終わりに残されたもの」に焦点を当てている点で共通しています。『ムーブ・トゥ・ヘブン』をきっかけに遺品整理や死生観のテーマに興味を持った方は、ぜひこれらのドラマもチェックしてみてください。

まとめ:遺品整理士が紡ぐ人生の物語を味わってみよう

『ムーブ・トゥ・ヘブン:私は遺品整理士です』は、遺品整理士という職業を通じて人の生と死、そして想いのバトンを描き切った感動作です。韓国ドラマらしい人間ドラマの深みと、日本人にも通じる普遍的なテーマが融合し、見る人の心に深い余韻を残します。遺品整理士という聞き慣れない仕事も、このドラマを観ればその社会的意義と尊さが自然と理解できるでしょう。

重厚なテーマながら10話という短さに物語が凝縮されているため、最後まで飽きることなく一気に観られる点も高評価の一因でした。視聴後にはきっと、「大切な人への想いを今のうちに伝えよう」「日々の何気ない物にも思い出が詰まっている」といった気持ちが芽生えるのではないでしょうか。涙と共に心が温まるこの韓国ドラマで、遺品整理士たちが紡ぐ珠玉の人生の物語をぜひ一度味わってみてください。

「遺品整理士 韓国ドラマ」は単なる職業ドラマではなく、生と死の意味を問いかけるヒューマンドラマです。遺品整理士という仕事の存在を知り、その社会的価値を再認識するきっかけにもなります。まだご覧になっていない方は、この機会にぜひ『ムーブ・トゥ・ヘブン:私は遺品整理士です』を視聴していただき、その感動とメッセージを受け取ってみてください。

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