「気づいたら部屋が散らかっている…」「片付けようと思っても、どこから手をつけていいかわからない…」そんな悩みを抱えていませんか?
ADHDの特性を持つ人の中には、片付けが苦手だと感じる方が多くいます。注意が散漫になりやすかったり、物の場所を決めるのが難しかったり、片付けを始めても途中で他のことに気を取られてしまったり…。
しかし、ADHDの特性を理解し、無理に「普通のやり方」に合わせようとするのではなく、ADHDの特性に合った方法を取り入れることで、片付けを得意に変えていけるかもしれません。
この記事では、ADHDの特性を活かしながら片付けを上手に続けるコツを紹介します。今日から試せる簡単なステップや、おすすめのツール・アプリも紹介するので、「片付けが苦手…」と感じている方はぜひ参考にしてみてください!

ADHDの人は多くの場合、周囲の刺激に対して注意が散りやすい特徴があります。片付けを始めても、部屋の別の場所が気になったり、スマホの通知が目に入ったりして、作業を中断してしまうことが多くあります。
一度やる気が出ると他のことが目に入らないほど集中できる「ハイパーフォーカス」状態になる場合もありますが、日常的には集中力の持続が難しいケースが多いです。
片付けは地道な作業が続きやすいため、モチベーションが下がると投げ出してしまいがちです。
ワーキングメモリとは、一時的に情報を保持しながら処理をする能力です。例えば「今どこまで片付けたか」「次に何をすれば効率的か」などを考えながら行動するには、ワーキングメモリが必要です。
ADHDの人は、この機能が弱いため、片付けるプロセスを頭の中で整理しづらいのです。
また、「どこから片付けを始めるか」「何を先に片付けるべきか」というタスクの組み立てが苦手な傾向があります。結果として、あちこち手をつけたり、そもそも行動に移れなかったりしてしまうことがあります。
衝動性が強いため目の前に興味を引くものがあると、そちらに意識が持っていかれがちです。片付けの最中に本やゲーム、スマホなど興味のあるものが視界に入ると、一瞬で片付け作業を放り出してしまうことがあります。
単調な作業や時間がかかるタスクを続けるのが苦手です。片付けはコツコツとした作業の連続なので、すぐに飽きてしまい「もういいや…」となってしまうことが多くあります。
分類や整理をしようとしても、「これはどのカテゴリーに入れたらいいのだろう?」と判断をする際に混乱しやすく、結果として部屋の中に仮置きが増えてしまいます。
また、何かを探すたびに引き出しを開け、出したものをそのまま置きっぱなしにするなど、片付けるより散らかるスピードが勝ってしまう状況がよく起こります。
ADHD特有の先延ばし癖(プロクラステイネーション)は、精神的なプレッシャーが強いほど加速しやすい傾向があります。「片付けなくちゃ」と思えば思うほど、動き出せなくなってしまう場合があります。
「やろうと思っていたのにできなかった」「また失敗した」という経験が続くことで自己肯定感が下がってしまい、さらに片付けに対する苦手意識が強くなってしまうこともあります。

ADHDの特性はむしろ強みとして活かせることもあります。ここでは、片付けに役立つADHDの強み8つを紹介します。
ADHDの方は、ふとした瞬間に思いがけないアイデアが浮かぶことがあります。このひらめきを片付けや収納に活かすことで、より使いやすく、快適な環境を作ることができます。
例えば、「ここに収納ボックスを置いたら便利そう!」と思ったら、すぐに試してみることで、これまで気づかなかった新しい収納方法を発見できるかもしれません。
また、従来の収納ルールに縛られず、柔軟な発想でレイアウトを考えることで、自分にとって最も使いやすい配置を見つけることができます。
片付けを「ルールに従うもの」と考えず、「アイデアを形にする楽しい実験」と捉えることで、作業が苦にならず、前向きに取り組むことができるでしょう。
ADHDの方は、新しい刺激や変化をポジティブに捉える傾向があり、環境の変化に順応しやすい特徴があります。そのため、家具の配置換えや収納方法の見直し、季節ごとの模様替えなども「新しい環境を楽しむ機会」として活かすことができます。
例えば、収納の仕方に飽きてしまったら、思い切って違うスタイルに変えてみると、意外と片付けが進みやすくなることもあります。
また、毎回違う方法を試すことに抵抗が少ないため、その時々で最適な環境を見つけやすく、自分にとって使いやすい収納スタイルを柔軟に作り上げることができます。。
ADHDの方は、一つのことに長時間集中するのが難しい反面、複数の作業を同時に進めるのが得意な場合があります。
これを片付けに応用すると、例えば音楽を聴きながら掃除をする、動画を見ながら不要な紙類を整理するなど、「ながら作業」を取り入れることで、飽きずに片付けを続けることができます。
また、「キッチンを片付けながらリビングの片隅も整理する」など、部屋の中を動き回りながら片付けるスタイルも向いているかもしれません。
一つの作業にじっくり向き合うのではなく、動きながら自然に整理を進めることで、片付けがよりスムーズに進んでいくでしょう。
ADHDの方は、創造力が豊かで独自の美的センスを持っていることが多く、その感性を片付けにも活かすことができます。
例えば、単なる整理整頓ではなく、部屋を「自分だけのアートスペース」にする感覚で収納を考えると、楽しみながら片付けられるでしょう。
カラフルな収納ボックスやお気に入りのインテリア小物を活用することで、視覚的にも楽しく、モチベーションの上がる空間を作ることができるでしょう。
また、物を収納するときも、「美しく並べる」「統一感を持たせる」といった視点を取り入れると、片付け自体がクリエイティブな作業になり、意欲的に取り組めるようになるでしょう。
ADHDの方には、時折「何かを一気にやりたくなる瞬間」が訪れることがあります。この爆発的なエネルギーを活かせば、短時間で驚くほど片付けを進めることができます。
例えば、普段は手をつけられなかったクローゼットの整理や、大量の不要品の仕分けを「今だ!」と思ったタイミングで一気に片付けることで、効率的に環境を整えることが可能です。
普段は大きなタスクに取り組むのが苦手でも、「今ならできる!」と思ったときに一気に動くことで、短時間で達成感を味わい、次の片付けへのモチベーションにつなげることができます。
ADHDの方は、理論的な収納法にこだわるよりも、感覚的に「ここに置いたら使いやすそう」と直感で判断する方が向いている場合があります。
例えば、「この引き出しに文房具を入れるより、机の上のボックスにまとめたほうがすぐに使えて便利そう」と思ったら、すぐに試してみることで、最も使いやすい配置を見つけることができるでしょう。
また、一度決めた収納に固執せず、「今のやり方がしっくりこないなら、また変えればいい」という考え方を持つことで、ストレスを感じることなく、自然と最適な整理整頓スタイルを確立することができます。
ADHDの方は、柔軟な発想力を活かして、自分だけの収納システムを作ることが得意です。
既存の収納用品だけに頼らず、例えば「100円ショップのケースを組み合わせてカスタマイズする」「壁にフックをつけてデッドスペースを活用する」など、自分の使いやすい形に収納をアレンジすることで、より快適な環境を作ることができます。
ADHDの方は、「こうしなければならない」という既成概念にとらわれず、自由な発想で問題を解決するのが得意です。
収納スペースが足りないと感じる事があった場合、一般的な方法にとらわれずに解決策を見つけることができます。
また、試行錯誤しながら自分に合った片付け方法を見つけることで、「最適なやり方は人それぞれ違っていい」という柔軟な考え方が持てるようになり、片付けのハードルを下げることができます。

ADHDと聞くと「片付けが苦手」「続けられない」というイメージが先行しがちですが、実はADHDには柔軟な発想力や好奇心、集中モードに入ったときの爆発的なパワーなど、片付けに活かせるポジティブな特性がたくさんあります。
ここでは、ADHD特有の強みを最大限に活かしながら、片付けを「苦手」から「得意」へと変えていくためのヒントを詳しく紹介します。
ADHDの人は、興味を持ったことに対して高い集中力を発揮する特性があります。片付けそのものを好きになるのはハードルが高いかもしれませんが、「ちょっとしたゲーム」として工夫すれば、意外と楽しめることがあります。
タイムアタック方式にする
・「15分だけ」「10分間でどれだけ片付けられるか」など時間を区切るとやる気が湧きやすく、ゴールに向けて集中しやすくなり、飽きにくいのが魅力です。
ご褒美を用意しておく
・片付けが終わったら、好きなお菓子を食べたりや動画視聴タイムにするなど、自分にとってのご褒美を用意しておくとやる気が高まります。
ADHDの人は、タスクが大きいと見ただけで「どこから手をつければいいの?」と混乱しがちです。そこで、片付けの作業をできるだけ細分化するのがおすすめです。
「引き出し一つ」から始める
・例えば「クローゼット全部を整理する」ではなく、「クローゼットの右上の棚1段分」など、さらに小さく区切ります。小さくした分、短時間でクリアできるので達成感を得やすく、続ける意欲が湧きやすいのがメリットです。
チェックリストで見える化する
・片付ける場所ををリストにして、一つ片付くたびにチェックを入れるとモチベーションが上がり、次のアクションにスムーズに移行できます。
ADHDの人は、モノの定位置をあいまいにしてしまうと「どこに片付ければいいのかわからない」「後でいいや」となりがちです。パッと見てわかる収納システムを作ることが重要です。
ラベリングをする
・「文房具」「書類」といった具合に、引き出しやボックスにラベルを貼って中身を明確にします。小学生が使うような大きな文字やイラストで表記してもOKです。ひと目で「何がどこに入っているのか」がわかるようにすると迷いが減ります。
透明な収納ケース・ファイルを使う
・中身が見えるタイプの収納ケースを選ぶと、いちいち開けて中を確認する手間が省けます。必要なものをすぐに取り出せるので「探し物ストレス」が激減し、散らかる前に「戻す」習慣もつきやすくなります。
ADHDの人が持つ「ハイパーフォーカス」という特性は、興味を持った瞬間に一気に集中力が高まる状態です。これをうまく利用すれば、短期間で片付け作業がはかどることがあります。
テーマを決める
「今日は本棚の整理だけに集中!」などテーマを一つに絞ると、ハイパーフォーカスが起きやすくなります。特に、興味のあるジャンルの本やアイテムから手をつけると、楽しく片付けを進めやすいです。
BGMを流すなど自分が楽しめる環境を整える
好きな音楽をかける、やる気の出るプレイリストを作る、アロマや照明でリラックスできる空間を作るなど、片付けに没頭しやすい環境を整えましょう。感覚への刺激をプラスすることで「片付けを続けたい!」という気分を高められます。
ADHDは型にはまらない発想が得意。既存の「片付け方マニュアル」には合わなくても、自分にフィットする独自ルールを編み出すことで驚くほど整理が進む場合があります。
自分でわかりやすい購入ルールを設定してみる
「何かを買うなら何かを捨てる」「1年間使わなかったら手放す」などを参考にしてみると、そもそも片付ける物が減って楽になるという人もいます。ADHDの人は衝動買いをしやすい一面もあるため、「増やさないルール」として自分でわかりやすい購入ルールを設定してみるのも良いでしょう。
ゾーニングで場所を明確化する
「ベッド周りはリラックス用品のみ」「デスク周りは仕事グッズのみ」など、エリアごとに用途や置く物を決めるシンプルなルールを設定するのも良いでしょう。何をどこに置くかがはっきりしていれば、片付けるときに迷う時間が減ります。
ADHDの人は、思いついたことをすぐに記録したり、視覚的にタスクを把握できるツールやアプリを使うのもおすすめです。
Todo管理アプリ
「Todoist」「Microsoft To Do」など、タスクを書き出して期限を設定できるアプリを使うと、「片付ける」という曖昧な目的が具体化します。アラームやリマインダーを設定することで、片付けを「忘れない」仕組みを作れます。
タイマーアプリ
Pomodoro Technique(ポモドーロ・テクニック)系のタイマーを使って25分作業+5分休憩を繰り返すなど時間を区切ることで、飽きっぽさを克服しながら計画的に部屋を片付けられます。
ADHDの「飽きやすい」「気が散りやすい」といった特性ばかりを意識すると、「どうせ続かない…」と自信をなくしてしまいがちです。
自分の意識をポジティブにしていけるような習慣作りをするのも良いでしょう。
自分を褒める習慣をつける
「昨日より机の上がきれいになった!」「今日も5分だけど片付けやった!」と、小さな進歩を見逃さずに自分を評価しましょう。ポジティブな気持ちが維持しやすくなり、次の行動につながります。
完璧を目指さない
「やれる範囲でやればOK」「多少散らかっていても、生活に支障がなければ問題ない」と、柔軟に考えましょう。片付けのハードルを下げることで、失敗の不安を減らし、気軽に取り組めるようになるでしょう。
自己肯定感を育てる習慣を取り入れる
片付けが進んだ時は、その成果を記録して振り返る習慣を持つと、達成感が自己肯定感につながります。日記や写真、ブログなどに自分の進歩を記録することで、次の一歩への自信が出てくるでしょう。

- ADHDの人は片付けが一生苦手なままなのでしょうか?
- 苦手意識が強いまま放置すると、片付けが負担になりやすいのは事実です。
しかし、ADHDの特性に合わせた片付け方法を取り入れたり、家族や専門家のサポートを受けることで、片付け習慣を無理なく身に付けられるケースは多くあります。
一度仕組みを作ってしまえば、「自分なりのやり方」で得意に変わる可能性も十分にあります。
- 子どもの頃から「片付けなさい」と言われ続けてストレスです。大人になってからでも克服できますか?
- もちろん可能です。子どもの頃は親や学校のルールに合わせることが多いですが、大人になれば自分の裁量で環境を整えられます。
ADHDの強みを活かして「片付けのルールを自分で作る」ことができるので、むしろ子どもの頃よりも自分に合った方法を見つけやすいです。
- 片付けをしてもすぐリバウンドしてしまいます。どう防げばいいですか?
- リバウンドを防ぐには、片付けやすい仕組みを整えることが大切です。
物の定位置を決めたり、ラベルや透明ケースを活用して「どこに何を戻せばいいか」を明確にしましょう。
また、一度に完璧に整えようとせず、少しずつ定期的に見直すほうがリバウンドを防ぎやすくなります。
- 仕事で使うデスク周りも片付けが苦手です。家の片付けと同じように考えて大丈夫でしょうか?
- デスク周りの片付けも基本的な考え方は同じです。
とくに「必要なものを取り出しやすく、戻しやすい状態にする」という点が重要です。
細かい文具類は仕切り付きのケースを使い、書類は用途別にファイルやデジタル管理を徹底するなど、視覚的に整理しておくと作業効率も上がります。
デジタルツールやアプリの活用もおすすめです。
- ADHDで散らかりがちな部屋がストレスになり、イライラすることがあります。どう対処したらいいでしょう?
- 部屋が散らかった状態が続くと、見た目だけでなく精神的にも疲れやすくなります。
まずは「短時間だけ片付ける」「小さな範囲だけ取り組む」など、小さな目標から始めてみましょう。
少しだけ整理された空間ができると気持ちも軽くなり、次の一歩が踏み出しやすくなります。
また、疲れやすい場合は片付けサービスを利用したり、家族や友人の手助けを頼むのも一つの方法です。
- 自分のアイデアで部屋をカスタマイズしすぎて逆に使いづらくなることがあります。
- ADHDの特性を活かしてアイデアを形にするのは素晴らしいことですが、実際に試した結果「使いづらい」と感じることもあるでしょう。
失敗したら「合わない方法だった」と割り切り、再び別の方法に変えてみる柔軟さが重要です。
使ってみて初めてわかることも多いので、試行錯誤しながら自分に合う整理整頓の形を見つけましょう。

「片付けが苦手」と感じることが多いADHDの特性ですが、それは決して克服できないものではありません。
ADHDならではのひらめき力、柔軟性、直感力、ハイパーフォーカスなどを活かせば、一般的な片付け方法ではうまくいかなかった人でも、自分に合ったスタイルを見つけることができます。
大切なのは、「完璧を目指す」のではなく、「少しずつ自分に合った方法を見つける」ことです。
片付けが続かないことに落ち込むのではなく、試行錯誤を楽しみながら、自分らしい整理整頓の仕組みを作っていきましょう。
また、片付けがうまくいかなくても、「やり方が自分に合っていなかっただけ」と前向きに考えることが大切です。
失敗を重ねながらも、「これは自分に合っている」「これは合わなかった」と少しずつ学んでいけば、片付けのハードルはどんどん下がっていきます。
ADHDの特性を活かした片付け方法を取り入れながら、自分が快適に暮らせる環境を整えていきましょう。
完璧でなくても大丈夫です。少しずつでも前進していることを実感しながら、自分にとって心地よい空間を作っていきましょう。